知らない人にいきなり怒られた

母と一緒に買い物に行った。
子パンのコーナーで、
ダタッコのように意中の菓子パンを買いたがる母。
それは、以前買ったことのある菓子パンで、
母は美味しくなかったと言っていたパンだ。
「これ、前に買ったけど、美味しくないって言ってたよ」
と言っても、どうしてもその菓子パンをカートに入れようとする母。

「このパンは中に何も入ってないのよ」
「ほら、色も悪いし、絶対に美味しくないって!」
私が説得していると、
そこに登場したのが、50歳位の女性買い物客。
「あーら、そのパンは美味しいわよ。
お宅、味覚傷害でもあるんじゃございませんか?
うちではこのパンをお気に入るに入れています。」
と言ったかと思うと、母のほうに向かって、
「ねぇ~、おいしいわよねぇ~。 ねぇ~、おいしいわよねぇ~。」
と満面の笑みを浮かべて、ねぇ~、おいしいわよねぇ~
をひたすら繰り返す。
壊れたゼンマイのオモチャようだ。
あまり関わってはいけない人だ、
と、私の触覚が危険信号を出していた。
女性は、私が棚に戻そうとしていたそのパンを素早く取り上げ、
パンは勝ち誇ったように私のショッピングカートに落ち着いた。
母の味方をして、
私を打ち負かしたかのように、
その女性は悠然とその場を去った。
「ねぇ~、おいしいわよねぇ~」
という妖怪のような声が次第に遠くなっていった。
私と母は似ていません。
もしかしたら、嫁と姑の関係に見えたのかもしれません。

↓ いつもクリックしてくださってありがとうございます。応援してください。

エッセイ・随筆ランキング

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA