鶴の恩返し リメイク版

みなさま、こんにちは! 今日は本当の幸せとは何かについて考えてみたいと思います。日本人なら子供の頃、お母さんに「鶴の恩返し」を読んでもらっていたでしょう。リメイク版では、不思議なイリュージョンの世界にあなたをお連れします。

山田さんの家では、孫のクルミちゃんがもう三歳になりました。お母さんもお父さんも共稼ぎです。面倒はいつもお祖母ちゃんとお祖父ちゃんの日課になっています。お母さんのお仕事は看護師さんで、夜勤の時は、バアバがクルミちゃんに絵本を読んで寝かしつけることになっています。今日の絵本は「鶴の恩返し」です。クルミちゃんが大好きなお話です。今日はジイジもクルミちゃんの枕元にいます。ジイジはクルミちゃんの寝顔を見るのが大好きなんです。

 

昔々あるところに、貧しい老夫婦がいました。ある寒い冬の日、おじいさんは一羽の鶴が罠にかかって苦しんでいるのを見つけました。かわいそうに思ったおじいさんが鶴を逃がしてやると、ツルは嬉しそうに飛び立っていきました。あれ? クルミちゃんは今日はとても疲れているみたいです。すやすやと寝息を立ててすぐに眠ってしまいました。絵本をクルミちゃんの枕元に置いて、ジイジとバアバは部屋を出ました。

 

ジイジとバアバは可愛いクルミちゃんの顔を見て満足しました。その夜、ジイジとバアバは大きな物音にびっくりして目を覚ましました。ドアをノックしている様子。ドンドン! ドンドン! 看護師のお嫁さんが夜勤から帰ってきたのはいいけど鍵でも忘れたのかな? ジイジとバアバが玄関に出てみると、ガラスのスライドの玄関越しに大きな鳥の姿が見えました。二人はびっくりして、ジイジが大声で、「いたずらはやめなさい! 警察に電話するぞ」と言ったところ、「びっくりさせてごめんなさい。私は怪しいものではございません。あなたに助けてもらった鶴です。恩返しをしに来ました」と、鶴が人間の言葉を話しました。

 

「わしらは夢をみとるんかのー? ばあさん、ワシの頬をつねってくれ」
おばあさんはおじいさんの頬を思いっきりつねってみました。
「ありゃー、ぜんぜん痛くないわい。こりゃーは夢じゃと思う」
鶴が話しかけてきました。「夢じゃありません。あなたがたが絵本の中に迷い込んでしまったんです。ここを開けてください」。

 

ジイジとバアバは困りました。でも、夢なので、大丈夫だろう、と思って、思い切ってドアを開けました。すると、そこには世にも美しい女が立っているではありませんか。絵本に描いてあるのと同じだ。二人は女を応接室に通しました。女は恩返しの布を織りたいから部屋を貸してほしいと言いました。女の話によると、布ひと巻きが一千万円もするというのです。ジイジとバアバは非常に喜んで、夢の中にいることも忘れて小躍りしました。

 

「どうぞ、この部屋を使ってください。誰も入らんよーにするけーね」と、バアバ。「布を折っている姿をワシらが見たら鶴の姿に戻って帰ってしまうんじゃろ? この物語ではそうなっとる」と、ジイジ。女は怪しげな目をキラリと光らせて、「いいえ、いつでも好きな時に部屋をのぞいてくださいな。自分の羽を取って布を織っています」とあっさり言いました。

 

「どうしてそんなにすぐにネタバレさせるわけ? それに君、なんか変じゃー。最初から恩返しに来たと言うたじゃろ? あんたが言うとるのは、絵本のストーリーと違うけーのー」とジイジが不信な顔で鶴の目の奥をのぞき込みました。「いいんです。絵本も変化するんですよ。そういうものです」と女はジイジとバアバの心の底までのぞき込むような鋭い目で見ながら話しました。

 

鶴は、来る日も来る日も布を織り続けました。そして、いつの間にか山田家の家族の一員になっていたんです。布を織る時は鶴の姿になり、山田家でご飯を一緒に食べる時は人間の姿になります。布は飛ぶように売れ、山田家は家を建て替え、リフォームしたり、家具を買ったり、車を買い替えたり、大変なお金持ちになりました。

 

しかし、三年も経つと、鶴の羽が生えてこなくなりました。やがて鶴の体は丸裸になり一本も羽が生えなくなりました。人間の姿になっても髪は抜け落ち、肌もボロボロでシワシワになりました。山田家の人達は、そんな鶴の姿には目もくれず、あれも買いたい、これもほしい、と欲張って鶴にもっと布を作ってくれとせがんでいました。食事も毎日高級なものばかり食べるようになり、金銭感覚が全く狂ってしまったのです。

 

ある朝、ジイジとバアバは、機織りの部屋で一通の手紙を見つけました。鶴からの手紙です。

私はもう限界です。
羽はもう一本も生えてきません。
恩返しは終わりました。
私の布で儲かったお金で楽しい人生を送ってください。
クルミちゃんによろしくお伝えください。
私の丸裸の体に暖かいセーターをプレゼントしてくれました。
お世話になりました。

 

鶴がいなくなってからというもの、山田家は金銭感覚がなかなか元に戻らず、鶴からのお金が入ってこないことでイライラするようになりました。ストレスが溜まって、さらに金使いが荒くなり、鶴のおかげで儲かったお金を全部使い果たしてしまい、さらに借金までしてしまったのです。

 

あまりの貧しさのため、山田家は安いアパートに引っ越すことになりました。あれから十年の月日が経ったある日の夜、ドアを激しくノックする音が聞こえてきました。ジイジが玄関に出てみると、お嫁さんが玄関先に立っているようでした。

 

「ごめんなさい。鍵を忘れちゃってね。最近忙しくてね、つい、いろんなものを忘れちゃうのよ。寝てた? ごめんなさいね。ドアの呼び鈴が聞こえないみたいだからドアを叩いちゃった。クルミはもう寝た?」

 

ジイジとバアバがクルミちゃんの部屋に行ってみると、三歳のあどけない顔のクルミちゃんがスヤスヤと眠っていました。枕元にはジイジが置いた「鶴の恩返し」の絵本がそのままありました。

 

 

人間の欲は止まりません。あれもこれも欲しいのです。欲しかったものが手に入ると、すぐに次のものが欲しくなります。ほしいものをすべて手に入れた人は「虚しくなる」と、よく言われていますよね。残念ながら、私は虚しくなるほどたくさんの物を手に入れたことはありません。しかし、時空を超えた世界、つまり、極楽浄土では過去、現在、未来、という概念がないと言われています。今この瞬間しかないらしいのです。今この瞬間に手元にあるものに感謝して生きていたいものです。「そのまんま」を受け入れて生きるのが一番楽で、幸せなのかもしれません。交通事故や突然の解雇など、生きているとどんなハプニングが起こるか分かりません。でも、こうやって、家族みんなが健康で一緒に住んでいることが一番の幸せだと思います。手もある。足もある。ごはんも食べれる。幸せとは、いつもの日常そのものだと思います。

 

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