「蜘蛛の糸」リメイク版

みなさま、こんにちは! 今日は、芥川龍之介氏の「蜘蛛の糸」をリメイクしてみました。文と文の隙間にどんでん返しの秘密が隠れていますよ。楽しんでね。主人公のカンダタは一体どうなってしまうのでしょうね。果たして助かる方法はあるのか?

 

御釈迦様は極楽の蓮池のふちを、御歩きになっていらっしゃいました。池に浮かぶ蓮の葉に目をやると、宝石のように美しい水滴が光り輝いているではありませんか。しかし、なぜか、生臭い匂いが漂っています。見ると、一つの蓮の葉の上にカエルの死骸が一匹。なんとも言えない悪臭を放っています。お釈迦様が死んだカエルを手に取り息を吹きかけると、なんと、カエルは美しい蓮の花に変わったのです。

お釈迦様はその池のふちに御佇みになって、水の表を覆っている蓮の葉の間から、ふと下の容子を御覧になりました。水晶のような水を透き徹して、地獄の光景が、まるで虫眼鏡で見ているようにはっきりと見えます。罪人達が針の山や血の池地獄でうめき声をあげています。

すると地獄の底に、カンダタという男が1人、針山で血を流しながら苦しんでいる姿が御目にとまりました。この男は、殺人、放火、窃盗、詐欺、などあらゆる犯罪に手を染めていましたが、一つだけ良いことをしていました。ある日、この男が道を歩いていると、大きな蜘蛛が一匹、這っているのが見えました。カンダタは殺そうと思いましたが、靴が汚れるので止めました。蜘蛛は命拾いしたことを非常に喜んでさっさと草むらに消えていきました。

御釈迦様がカンダタの容子を見ていると、あの時命拾いした蜘蛛がやってきて言いました。「御釈迦様、あの男は僕の命を助けてくれた優しい人だよ。僕が蜘蛛の糸を出すから、その糸を男のところに垂らして引き上げていただけませんか?」と、蜘蛛は言いました。カンダタは、蜘蛛を殺そうと思った時、自分の靴のことしか考えてなかったのに、蜘蛛は命の恩人だと思っているようです。

御釈迦様は、「そりゃー関心な男だ。よーし、助けてやろう」とおっしゃいました。早速、蜘蛛が出した糸を地獄に垂らしてカンダタを助けようとしました。糸がカンダタの前でキラリと光りその存在感を露わにしたその瞬間、カンダタが上の方をみると、なんと大きな蜘蛛がカンダタに向かって手を振っているではありませんか。助かった! 俺は極楽浄土に行ける! カンダタは、必死に糸をたぐりよせ、上へ上へとよじ登りました。かなり上まできたと思った時、手も足も疲れてしまい、一休みしていると下のほうから、ウォー、ウォーと不気味な声が聞こえてきます。見ると、たくさんの罪人が我も我もと蜘蛛の糸にぶら下がってよじ登ろうとしているではありませんか。これは大変だ。こんなにたくさんの人がぶら下がると、蜘蛛の糸が切れてしまう。「やめろー、お前達は登ってくるなー、これは俺だけの糸だー」と、カンダタは叫びました。

その時でございます。どこからともなく一匹のカマキリが飛んで来て、カンダタのすぐ下の糸に止まりました。カマキリは大きな目をカンダタに向けて言いました。「俺のこと、覚えているか?」。カンダタはカマキリのことなど全く記憶にありませんした。カマキリはニヤリと笑って言いました。「あの時、お前に羽をちぎられたカマキリさ。お前のおかげで俺は飛べなくなった。あっという間に大きな鳥に食われちまったよ。」。カンダタは混信の力を込めて糸にしがみついています。「俺が悪かった。お願いだ、助けてくれー」。カンダタは力の限り叫びまた。と、次の瞬間、カマキリは自分のすぐ下の方の蜘蛛の糸を切ったのです。下のほうでうごめいていた罪人の軍団は真っ逆さまに地獄に落ちていきました。「そら、これで糸は大丈夫だ。さっさと上に上がれ」。どういうわけか、カマキリはカンダタを助けたのです。カマキリは、ひらひらと飛んで遥か彼方に見える御釈迦様の肩に止まりました。

とにかく地獄から逃れたい一心で、カンダタは必死に糸を手繰り寄せて登りました。やっとの思いで、御釈迦様の御顔がはっきり見て取れるくらいまで登ることができました。蜘蛛もカマキリも、頑張れ! と言って応援してくれています。やがてカンダタの手がお浄土の淵にかかりました。やった! 俺は助かる。ここは極楽浄土に違いない。

御釈迦様が右手を差し伸べくれました。柔らかくて暖かい御釈迦様の手を、カンダタが右手でしっかりと握りしめたその瞬間にカンダタの体は一気に引き上げられました。もう大丈夫、と思ったカンダタでしたが、ゆっくりと体を休ませる暇もありませんでした。なんと御釈迦様の手がカンダタの手から離れないのです。御釈迦様の手はどんどん冷たくなるばかりです。カンダタが御釈迦様の右手を払いのけようとするのと、蓮の池に血が滴り落ちるのがほとんど同時でした。御釈迦様の手が刀に変わったのです。

御釈迦様の顔は見る見るうちに野獣のような顔になり、その御姿は見るもおぞましい巨大なムカデに変わってしまいました。御釈迦様の肩にとまっていたカマキリは、いつの間にか巨大な虫となり奇妙な声で鳴いていました。ムカデと蜘蛛はカマキリの背に乗って遥か彼方に飛び去って行きました。蓮の池は血の池地獄と化し、カンダタは泳ぐ力も尽き果てて、池の底に沈んでは浮かび、浮かんでは沈み、死ぬこともできずに苦しみ続けるのでした。

「ほほほほほ、ここは極楽なんかじゃない。カンダタ君。ここはお前の第二のステージさ。つまり新しい地獄に落ちたということなんだよ。そこから抜け出す方法を一つだけ教えてやろう。それは、お前の隣にいる人を助けることだよ」。どんよりと曇った生臭い空から乾いた声が聞こえてきました。

 

文学作品を読みましょう。芥川龍之介の作品は、えぐい表現がたくさん出ていますが、ところどころに神様が散らっとだけ顔を出しているように思います。素晴らし人生のヒントが隠されているかもしれません。

 

 

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